竹宮惠子原作の『風と木の詩』のその後を活字で描いたという『神の子羊』。
やっとこ全三巻が手元に揃ったので、また一巻から読み直してみました。
探しに探し回ってやっと手に入れた三巻でしたが、ちょっと期待しすぎてたのか、肩透かしをくらったような気分。
『風木』の延長で読むとガッカリしちゃうと思うので、これから読もうと考えてる人は、普通の小説読む気持ちでいた方がいいと思います…。
さーて、ネタバレとかあるので、感想は続きからどうぞ!
全体の感想としては、まぁ面白かった。です。
ただ、”セルジュの人生を探る”という道から大きく離れてしまったのが、セルジュのその後を知りたいと望んでいる人にとってはかなり残念な結末かと。
『風木』の延長で読むとガッカリしちゃうと思うので、これから読もうと考えてる人は、普通の小説読む気持ちでいた方がいいと思います。
読み手としては、『風木』の影響で読み始めたわけなので、主人公の少年と少女になんの興味も抱けず、ただひたすらセルジュの痕跡を追うだけの道具的なキャラクターだったのが、二巻でだんだんとその個性に惹かれて行き、三巻では完全に彼らの物語を楽しめたというのが救いかなー。
三巻に至ってはほっとんど、セルジュのその後の詳細な事実とか出てこなかった(笑)
その代わりに、かつてのあのセルジュとジルベールの物語をなぞるように、主人公のアンリや、フランや、マシュウが、えらいドラマチックに愛を交換しあってます。
最後の方は怒涛の展開で、かなりえげつなかった!(笑)
賢い女の子が好きな私としては、フランは非常に可愛くて、共感できる少女でした。
アンリはきっと、この賢い少女と、大叔母さまと秘書のセシルの愛を一身に受けて立ち直っていくんでしょうな。
そこがセルジュとは違うところというか…。まぁ心には大きな穴が開いてしまったけども、その全てをフランが受け入れてくれるでしょう。
ところで、アンリを囲む女性がみんな、パットのように聡明で我慢強く暖かい心の持ち主なのがとっても羨ましい…!私も囲まれたい…!
とまぁ、こっちの物語はこんな感じ。
セルジュのその後の人生について、わかっている事柄だけをとりあえず書き出してみました。
もし、ネタバレでもいいから、知りたい!という方は以下反転でどうぞ。
【セルジュ・バトゥール】
18歳でバトゥール子爵家を継ぎ、パリの織物商の娘であるイレーネ・デュリュイという少女と再会(フラワーコミックス『風と木の詩』2巻のアルルの酒場で現れた少女)、結婚を決意。
無意識下で彼女の面差しにジルベールの影を重ねている事について、パスカルから指摘、結婚を反対されるも頑なに否定し、結婚を押し通す。
その後イレーネとの間にジルベールにそっくりなレオンという一人息子をもうける。
子供が10歳になる前にパリの屋敷から放浪の旅に出、母校のラコンブラード学院にカールの誘いにより音楽教師として就任。二度とパリの屋敷には戻らず、アルルで残りの生涯を過ごす。
多数の作曲をし、音楽家として有名ではないが音楽史に名を残す。
享年47歳。
【パトリシア・ビケ】
セルジュへの気持ちは告白せず、胸に秘めたまま生涯を送る。
家庭教師⇒新聞社の下働き⇒雑文書き⇒署名入りの記事を掲載する記者、というように仕事を順調にステップアップし、職業婦人に。
セルジュがパリから離れたのを機に、新聞社の同僚と結婚。2児をもうける。
生涯セルジュのよき友、よき理解者であった模様。
【パスカル・ビケ】
セルジュの婚約について、相当な辛口のコメントをズバリとした模様。
彼本人は、お望みの『ロバのドタ足』的な女性と結婚したと推察。
大勢の孫に囲まれ、幸福な晩年を過ごした。
【カール・マイセ】
ラコンブラード学院を自主退学した後、神学校に進む。
その後、母校のラコンブラード学院の学院長に就任。
セルジュを音楽教師に招聘。
【ジルベール・コクトー】
死後、オーギュによりケルビム・デ・ラ・メール城へ遺体を運ばれる。
城の地下深くに作られた霊廟へ埋葬される。
【オーギュスト・ボウ】
ケルビム・デ・ラ・メール城の地下に、ジルベールを埋葬。
死後、ジルベールの隣に自身の遺体を埋葬し、隣あって眠る。
かなり簡潔に書いてるんですが、本を読むと主人公の二人と一緒に、探偵になったような気分で彼らの人生に触れる事が出来てなかなか面白いです。
セルジュの人生は、なんつーか…一筋縄じゃいかんわなぁ…という感じなんですが、でもかなり納得出来る展開でした。
ケーコたんは続きを描かないと言ってはるようなので、増山さんにいつかまた機会があれば、セルジュ達の物語を完結させて欲しいなぁと思います。